今回、皆さんと考えたいのは「音楽」と「メンタル」の関係についてです。
【概要】
音楽を聴くことで気分が上がったり、ストレスから解放された経験を持つ人は多いでしょう。実際に研究でも、好きな音楽がストレスホルモンの低減や気分の回復、さらには集中力向上にも効果的と示唆されています。本記事では、海外・国内の研究論文を参考に「好きな音楽」と「メンタル」の関係について掘り下げ、どのように活用すればより効果が得られるのかを解説します。
はじめに
人は昔から音楽を楽しみ、慰めや癒しの手段にしてきました。現代ではスマートフォンやストリーミングサービスによって、いつでもどこでも自分の好きな音楽を聴けるようになっています。そうした環境の中、ストレス社会と呼ばれる現代で音楽がどのようにメンタルヘルスに寄与しているのか、多くの研究が行われてきました。
例えば、アメリカ心理学会(APA)の関連文献や日本の精神医学分野の論文には、好きな音楽を一定時間聴くことでストレスの自己評価が改善し、気分の落ち込みが緩和されるという報告があります。大切なのは、自分が「心地よい」「気分がアップする」と感じる音楽を選ぶことで、音楽の効果が高まる点です。ここでは、海外の具体的な研究から日本での調査事例までを確認しながら、そのメカニズムと日常での取り入れ方を見ていきます。
海外の研究例
アメリカの実験研究(Frontiers in Psychology, 2019)
アメリカ・ニューヨーク州の大学が行った実験研究(Singer et al., 2019)では、ストレスを抱える大学生60名を対象に「リラックス目的で好きな音楽を15分間聴く」グループと、「静かな環境で過ごす」グループを比較しました。'''その結果、音楽リスニング群ではコルチゾール(ストレスホルモン)の平均値が約20%低下し、気分尺度(POMS)のストレス項目が約15%改善'''したと報告されています。
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyg.2019.01834/full
研究者は、好きな音楽を聴くことで脳内のドーパミン放出が促進され、ストレス緩和やリラクゼーションに寄与すると考察しました。
イギリスの多施設共同調査(BMC Psychology, 2021)
イギリスでは、精神科外来に通院する患者100名を対象に、週3回以上・1回30分の音楽鑑賞を4週間続けた群と、音楽を聴かない群に分け、うつ症状(PHQ-9)の変化を追跡。'''音楽リスニング群はうつスコアが平均で約12%低下'''し、対照群との差が有意だったと報告しています(Langley et al., 2021)。ただし、音楽のジャンルや音量など個人差も大きいため、さらに細分化した研究が望まれるとのことです。
https://bmcpsychology.biomedcentral.com/articles/10.1186/s40359-021-00560-3
日本の研究例
大学生の音楽鑑賞とストレスレベル(日本健康心理学会, 2018年報告)
日本健康心理学会(2018年)の研究によれば、大学生約200名を対象に音楽聴取の頻度とストレス自己評価をアンケート調査したところ、'''「ほぼ毎日、好きな音楽を聴く」層は「週に1回以下」の層に比べてストレスレベルが約15%低く自己報告した'''と報告されています。学業やアルバイトの疲れを音楽でリフレッシュしている学生が多かったとされます。
企業のメンタルヘルス対策(経済産業省「健康経営」事例, 2020年)
経済産業省が紹介する「健康経営」事例(2020年)で、大手IT企業が昼休みや休憩時間に社員の好みの音楽を流す社内BGM制度を導入したところ、'''ストレスチェック(K6)で従業員の約10%がストレススコア改善'''を示したとのことです。音楽を聴くかどうかは任意だが、集中力が途切れやすい午後の時間帯にBGMが流れることで気分転換になるという声が多く上がったそうです。
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeiei.html
好きな音楽がメンタルに与えるメリット
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リラクゼーション効果
- 音楽鑑賞中に副交感神経が優位になり、心拍数や血圧が安定しやすい。
- ストレスホルモンのコルチゾールが抑えられ、リラックス状態を得やすい。
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感情表現・解放
- 歌詞やメロディに共感することで、自分の感情を認識したり、ネガティブな感情を放出できる。
- 音楽が自己表現の代替手段となり、心を整えるサポートとなる。
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モチベーションや集中力アップ
- 一定のリズムやテンポが作業効率を上げる場合がある。自分の好きな音楽が頭をクリアにしやすい。
- 特にアップテンポな曲は気分を高揚させ、作業意欲を高める効果が期待できる。
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社会的つながりの形成
- ライブや音楽イベントに参加することで、共通の興味を持つ人との交流が増え、孤立感を和らげる。
- SNSなどを通じて音楽の好みを共有し、コミュニティ内でのサポートが得られることも。
好きな音楽を日常に取り入れるコツ
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通勤・通学時にプレイリスト活用
- 好きな曲を集めたプレイリストをスマートフォンで用意し、移動中に聴く習慣をつける。
- 朝は元気になれるアップテンポ、帰宅時はリラックスできるスロー曲など使い分ける。
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作業BGMとして適度に
- デスクワークや勉強時には、耳障りにならない程度の音量・ジャンルを選ぶ。
- 集中力を要するタスクならインストゥルメンタルや自然音を混ぜるのも手。
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歌詞やメロディに共感する
- 自分の気持ちを代弁してくれるような歌詞の曲を聴くと、感情が整理されやすい。
- ストレスや悲しみを感じるときは、あえて明るい曲ではなく、共感できる曲で心をほぐす方法もある。
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1日の終わりに音楽を聴いてクールダウン
- 就寝前のリラックスタイムに好きな音楽を流して呼吸を整えると、眠りにつきやすくなる。
- ただしアップテンポや音量が大きい曲は交感神経が優位になり睡眠を阻害する恐れがあるため注意。
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ライブやコンサートに参加する
- 実際に音楽イベントに行き、生の演奏や共有する熱気を感じることで、大きなストレス解消が得られる場合がある。
- 感染症対策などに注意しつつ、可能であればオフラインの音楽体験も検討。
まとめ
好きな音楽を聴くことは、'''ストレスやうつ症状の軽減、気分の向上などメンタルヘルスに多くのメリット'''をもたらす可能性があると、複数の研究が示唆しています。アメリカのSinger et al. (2019)は、好きな曲を15分聴くとコルチゾールが約20%低下し、気分スコアが15%改善したと報告。イギリスのLangley et al. (2021)でも、週3回の音楽鑑賞でうつスコアが12%低下というデータが示され、日本国内でも大学生や企業で音楽を活用したメンタルケア事例が増えています。
音楽がメンタルに効くメカニズムとしては、リラクゼーション効果、副交感神経の活性化、脳内の快感物質(ドーパミンなど)放出、感情解放などが考えられます。'''大事なのは「自分が好きだ」と感じる曲を聴くこと'''で、ジャンルや歌詞、テンポなどが自分に合っていればリラックスや集中力アップにつながりやすいでしょう。
忙しい日常の中でも、通勤・通学時や休憩時間、就寝前などに音楽を取り入れることで気軽に気分転換が可能です。さらにライブやコンサートに足を運んだり、SNSを通じて音楽仲間とつながったりすることで、社会的なサポートを得ることもできます。'''自己流の楽しみ方を見つけながら、メンタルヘルス維持に役立ててみてはいかがでしょうか。'''
(本記事はSinger et al. (Frontiers in Psychology, 2019), Langley et al. (BMC Psychology, 2021)などの研究を参照し、執筆しています。音楽の選択や音量調整などは個人差が大きいので、自分に合った方法を模索し、必要に応じて専門家や医療機関への相談を検討してください。)